所得税法では、損益通算という制度が認められています。損益通算は、一定の所得から発生した損失を他の所得から発生した利益にぶつけることができるので、納税者にとってはうれしい制度と言えるでしょう。
ですが、ぶつけることができる損と益は限られているので、その対象範囲を明確に理解しておく必要があります。
特に大切なのは、ぶつけることができる損の範囲なので、この点について検討してみます。
まず、基本的には対象となるのは不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額となります。
ただし、その損失の金額が生活に通常必要でない資産にかかる所得の金額の計算上生じたものである場合には、その損失は生じなかったものとみなして損益通算の対象には含みません。
このうち、不動産所得の損失については、損失が発生した不動産の主たる所有目的が何か(生活に通常必要でない資産に該当するか)によって損益通算の対象になるか否かが変わってきます。
主たる所有目的については、その所有者の状況(ex職業、生活実態)や対象となる不動産の性質や利用状況、所有するにいたった経緯、得られる利益やコストなど諸般の事情をトータルで勘案して、客観的に判定されます。
例えば、甲さんが第三者にリゾートマンション1室を貸し付けて不動産収入を得ていたとします。
ここで、甲さんの所有目的を判定する上で、ひとつのポイントになるのがそのリゾートマンションを甲さんが私的に使用できるか否かということです。
仮に、自分もこの部屋を利用することができ、しかも他者より優先的に使える環境で、かつ、実際に甲さんが頻繁に私的利用していた場合はどうなるでしょうか。
この場合、甲さんの主たる所有目的は、自分で楽しむ(保養する)ことにあると考えられます。このように、主として趣味や娯楽、保養、鑑賞などの目的で所有する不動産は、明らかに生活に通常必要でない資産に該当します。
ですので、このリゾートマンションの貸付により生じた損失は損益通算の対象にはなりません。
一方で、仮に甲さんはこのマンションを利用することができず、またほかのリゾートマンションの貸付も行っているような場合には、主たる所有目的は投資することにあると考えられます。
ですので、損益通算のルールに従い、このリゾートマンションの貸付により生じた損失は他の所得の金額(益)にぶつけることができます。
このように、損益通算を考えるときは、生活に通常必要な資産に該当するか否かということで取り扱いがまったく異なりますので注意が必要です。
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